第11回全国地域映像コンクール受賞作品歴代受賞作品紹介

第11回全国地域映像コンクール受賞作品

  • グランプリ
    相馬野馬追を疾走する伝統行事
    福島県南相馬市
    選評

     これは正確には二つの作品である。すなわち東日本大震災前(平成21年度)の「相馬野馬追」三日間の記録と、震災の年規模を大幅に縮小して行われた「東日本大震災復興相馬三社野馬追」の二本である。
     「相馬野馬追」といえば誰でも一度はその名を聞いたことがあるほどの有名な伝統行事であり、野生馬の生け捕り、花火で打ち上げた三色の布を奪い合うなど勇壮な競技で知られるが、それが3日間にわたるさまざまな競技の総称であることは今回初めて知った。しかし、東日本大震災と原発事故で深刻な被害を受け、行事の実現が危ぶまれる事態になった。そのとき人々はどのように対処したか。言ってみれば前者は「伝統行事の記録映画」であり、後者は大震災の「関連ドキュメンタリー」である。
     このような例は極めて珍しい。伝統行事は正確に記録すればするほど基本的に不変であり、2本目が作りにくくなるからだ。しかし、この作品の場合、前者の詳細な記録は後者の背景となり、災害の大きさと状況の深刻さを際立たせている。また、後者がなく前者のみであったなら、あの大震災後なにをのんびりしているのだと言われてしまうだろう。
     制作者の力量をうかがわせる作品である。

    映像プロデューサー 加藤 辿
    相馬野馬追を疾走する伝統行事
    作品時間:69分00秒 (1M)
  • 優秀賞
    丹波の漆かき ~今に伝わる漆かきの技術~
    京都府福知山市
    選評

     「漆」は日本文化の代表的伝統産業文化である。
    だが近年輸入漆に押されて日本漆の生産量は全体の2%に過ぎない。
     この作品はかって日本を代表する漆の産地であった福知山市がこの伝統産業を維持・継承するためにNPO法人「丹波漆」が中心となって制作した漆の歴史的文化の特長、漆かきの技術を分かりやすく表現した映像記録である。
     映像記録は一人の漆かき職人の一年間の活動を通して漆かきの作業工程が克明に描かれている。長く苦労の多い作業の結果、集められた漆は日本文化の結晶である。完成した漆器に深い感銘を覚える。
     またこのNPO法人は伝統技術を後世に伝えるために子供たちを中心にその技術を継承するための様々な努力を続けている。作品を通して伝統文化を守り継承するということの重要性が説得力を持って伝わってくる。
     観る人に感動を与える秀作である。

    プロデューサー 澁谷康生
    丹波の漆かき ~今に伝わる漆かきの技術~
    作品時間:27分53秒 (1M)
  • 地域文化アーカイブス理事長賞
    周囲4キロ 小さな島の現代アート ~岡山市・犬島~
    岡山県犬島
    選評

     岡山県犬島、周囲4キロのこの小さな島には現在50人程が暮らす。明治の終わり、島に銅の製錬所が出来たが僅か10年程で閉鎖された。島内に自山鉱を持たなかったことと銅価格の暴落で廃鉱となったが、最盛期は三千人が関わった産業遺構はそのまま島に残された。
     現在、これらの遺構は、ベネッセの協力により、モダンアートの製錬所美術館に変身している。
    犬島はこの遺構を中心に現代アートによる町起こしをするユニークな島である。鉱滓からなるカラミ煉瓦や工場跡の大煙突など独自の産業景観は、現代美術と実によくマッチする。
     作品は、遺構の研究を続ける鈴木頴一氏と島在住の昭和8年、12年生まれの女性の語り部を得て、犬島の今と過去を巧みに紹介している。
    岡山シティミュージアムはここ数年力作を送り続けてくれている。
     『直孤文の記録 千足古墳石障保護措置』『コメ作りはクニ作り』は、二年連続グランプリに輝いた。
    『犬島』を含め、いずれも地域からの発想であり、年間を通して取材する姿勢が今回も高く評価された。

    メディアプロデューサー 高島秀之
    周囲4キロ 小さな島の現代アート ~岡山市・犬島~
    作品時間:15分00秒 (1M)
  • 審査員特別賞
    船頭のわざ・舟大工のわざ -長良川鵜飼観覧船関連技術記録映像-
    選評

     岐阜市の長良川鵜飼は、1300年の歴史を持つ漁法。鵜匠が鵜を巧みにあやつり、鮎を捕らえる。現在でも「御料鵜飼」でとれた鮎は、皇室などに献上されているそうで、映像の中では皇太子殿下の視察の様子も紹介されている。
     この映像作品は、鵜飼を観覧するときに乗る「鵜飼観覧船」を建造する舟大工と、それを操舵する船頭の技を記録したものだ。
     「船頭の技」では、1隻の船を2ないし3名で操るとのことで、そのときの技法を詳しく紹介している。カメラのアングルを工夫したり、竿の動きに合わせて水中撮影をするなど、わかりやすい映像構成で表現されている。そして、個々の技術もさることながら、同じ船に乗る船頭同士の息を合わせることが最も重要なのだと言うことが分かってくる。
     「舟大工の技」では、特殊な道具を使って、手仕事で船を仕上げていく様子が描かれる。設計図はなく、熟練した大工から若い大工へとその技が受け継がれているようだ。板を継いでいく手法など興味深く、もっと長く他の手法も見せて欲しかった。
     船頭も大工も、本人たちのインタビューが少し入っているが、こちらももっと話を聞きたかった。技を伝える彼らの精神に触れることで、この映像の価値がより増すと思うからだ。

    (株)NHKエンタープライズ
    エグゼクティブチーフ・プロデューサー
    寺田一教
    船頭のわざ・舟大工のわざ -長良川鵜飼観覧船関連技術記録映像-
    作品時間:11分30秒 (1M)
  • 奨励賞
    棟方志功と富山の人々
    富山県民生涯学習カレッジ
    選評

     近眼で版木に顔を付けて製作し、ユニークな発言で知られた棟方志功さんの疎開時代の出会いを描いた作品です。昭和二十年福光町/現南砺市に移住した棟方志功は昭和二十六年十一月まで福光町で精力的に活動しました。昭和二十三年には百九十点もの作品を製作しています。棟方自身が第二の故郷で一大転機と述べている「富山体験」とは立山に代表される越中の自然の美しさ、仏への他力本願信仰、地元との温かい交流です。本作品では「板画」「倭絵」だけでなく小学生に絵画を教え、地元の皆さんと歌道に精進し、書で交わる棟方の多彩な活動が丁寧に描かれています。
     地元の皆さんのインタビューも興味深い内容です。棟方の作品製作の速さや天衣無縫な人柄がよくわかります。棟方ワールドの素晴らしさと同時に、戦後間もなくの「地方」文化サークルの教養の高さにも改めて考えさせられるものがあります。

    株式会社メディア開発綜研 特任研究員 菊地 実
    棟方志功と富山の人々
    作品時間:27分37秒 (1M)
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