第13回全国地域映像コンクール受賞作品歴代受賞作品紹介

第13回全国地域映像コンクール受賞作品

  • グランプリ
    荒船風穴 ―下仁田と世界を繋いだ生糸―
    群馬県下仁田町
    選評

     群馬県の下仁田と言えば有名な「下仁田ねぎ」と「蒟蒻(こんにゃく)」、それに最近では世界遺産に指定された「官営富岡製糸場」を思い出す方も多いだろう。本作品は養蚕王国群馬を蔭で支えた技術とその遺跡の話である。
     現代人は蚕は桑さえ与えれば、いつでも育つと思っているひとが多いだろうが、産業として成立するには、そんなに簡単なものではない。生育期に桑がなければ蚕は育たないし、蚕が毎日旺盛な食欲を見せてもそれに見合う桑がないときは餓死してしまう。必要な時に必要なだけ育つようにしなければならないのである。桑と蚕の生育期を合わせるために昔から行われてきたのが、蚕の産卵を種紙のうえで行わせそれを低温で保存し必要に応じて暖かい環境に移す技術である。これは時間差ばかりでなく場所の差を調整する効果もあり、これによって生きた蚕の輸送が可能になった。
     だが、電気もない時代どうやって温度の管理ができたのか?そこで本作品のテーマである「荒船風穴」の登場となる。冷たくて隙間の多い岩の間を通って冷やされた風が吹き出す「荒船風穴」が天然の冷蔵庫として利用されたのである。山の斜面に石垣を積み、そこに半地下式の収蔵倉を作って蚕の種紙を保管する引出を作り付ける。ただ、それだけで温度0度近辺、湿度100%の蚕卵に理想的な条件が得られたのである。
     現代に生きる私たちがこうした産業革命初期の技術をみると、そのエレガントな思想や巧みな自然利用に強い感動を覚える。自然を押さえ込もうとする現代の技術とは異なり、自然に寄り添いその恵みを分けて貰う別の技術の思想があったことを考えさせてくれる優れた作品である。

    映像プロデューサー 加藤 辿
    荒船風穴 ―下仁田と世界を繋いだ生糸―
    作品時間:15分56秒 (1M)
  • 優秀賞
    とやまの薬が生んだ信頼の絆~とやま売薬物語~
    富山県民生涯学習カレッジ
    選評

    この作品は約400年の歴史を持つ「とやま売薬」にスポットを当てながら売薬業にかかわった様々な富山の産業の発展を描いたものである。先に薬を渡し後で精算するという「先用後利」という売薬方法は売り手と買い手の信頼関係がなければ成り立たない。作品では信頼関係を築き上げた売り子たちの努力が克明に描かれている。又、情報の少ない時代では売り子がもたらす情報が人々の社会に対する目となっていた。その意味で売り子は社会にとって貴重な存在であることが強調されている。江戸時代には富山藩が藩の事業として売薬業に力を入れ、薬産業の発展に大きな役割を果たしたことも十分に描かれている。明治に入ると富山の売薬業は近代化の波に押されて存続が危ぶまれたが売薬資本を利用して関連する産業を発展させた富山県民の英知には感心させられる。この作品は子供たちにも理解させる為に平易にわかりやすい作品になっていることも評価できる。「とやま売薬」の根底に流れる人と人の信頼関係の大切さが強く伝わってくる秀作である。

    プロデューサー 澁谷康生
    とやまの薬が生んだ信頼の絆~とやま売薬物語~
    作品時間:23分50秒 (1M)
  • 理事長賞
    特別史蹟水城跡〜100年ぶりの土塁断面発掘調査〜
    福岡県
    選評

     水城は、『日本書紀』にも記されているように、我が国が百済に味方して、朝鮮半島で唐・新羅連合軍と戦って大敗した後、
    博多湾方面からの攻撃から、大宰府を守るための防御線として644年に築かれた土塁とそれを囲む水濠で、国の特別史蹟に指定されている。
     初めての学術調査が実施されたのは大正2年で、それから100年の節目となる平成25年度、再び土塁断面の発掘調査が行われた。
     作品はその全映像記録である。土塁を築くにあたり、板でわくを作りその中に粘土や砂を交互に敷き、一層ごとに杵でつき固めて盛り上げる版築(はんちく)工法や、
    盛土の間に樹木の枝葉を敷き詰めて基礎が滑らないようにする敷粗朶(しきそだ)工法が採用されている様子が丹念に紹介されている。

    また、それは前回の発掘記録にも残されている通りの技法でもあった。1500年を経て、樹木の枝葉までがそのまま粘土の層に残っていたのは驚きである。

    これらの工法は、時代を超えて現代の土木技術の中にも生きているようだ。短いレポートながら、古代土木技術の素晴らしさを余すところなく紹介した佳作である。

    近年の手抜きパイル工法の技術者にも見せてやりたいものだ。

    メディアプロデューサー 高島秀之
    特別史蹟水城跡〜100年ぶりの土塁断面発掘調査〜
    作品時間:14分38秒 (1M)
  • 審査員特別賞
    描蒟醤と備中漆
    岡山県
    選評

     映像は、まず、備中漆の歴史と漆掻きの方法を概観する。
     続いて、備中漆復興20年を記念する特別展示における秀でた個性ある作品群のいくつかについてそれぞれの技法を簡潔に紹介している。
     次に、描蒟醤(かききんま)が採り上げられる。描蒟醤とは、岡山の漆芸家難波仁斎氏が郷土の備中漆を使い創始されたもので、漆面に模様を描き、透明漆をかけて仕上げる技法をいう。その技法について、塩津容子さんが図柄をデザインし、乾漆を作り、それを使って描蒟醤の作品(乾漆描蒟醤食籠『春の足音』)を仕上げるまでの制作過程をご本人の解説を加えながら美しい映像で詳細に描き出している。鮮やかに仕上がったように見えるものに、さらに漆を塗り、磨きをかける手順を繰り返す様は感動的である。備中漆は、透明度が高く、強く、光沢があるなどの優れた特長を持つことも語られる。
     最後に、備中漆の復興のため、漆芸家、漆掻き人はもとより地域の人々も協力していることが頼もしく思われる作品である。

    地域文化アーカイブス副理事長 濱田一成
    描蒟醤と備中漆
    作品時間:59分03秒 (1M)
  • 奨励賞
    蘇る音色 南吉ゆかりのピアノ その復元の軌跡
    愛知県安城市
    選評

     文化財は新規にレプリカを作るよりも復元修復する方が難しい。ましてや復元するオリジナルの保存状態が最悪だと困難を極める。『ごん狐』で知られる童話作家新美南吉ゆかりのピアノが農家の納屋から発見された。ピアノは雨漏りがひどく後ろ半分は木が腐っている。これを復元しようと決意した市役所・博物館の意気込みも驚きだが、このピアノを見事に復元させた「巧みの技」には感心させられた。可能な限りオリジナルを尊重、木の部材を切り貼りしていく山岡哲さんの修理術は「お見事」という外ない。80年前のピアノは現在の合板積層ではなく一枚板で作られている。時間を掛けた修理でピアノは見事に蘇った。この作品を見て近代工業製品であるピアノ修復技術をもっと詳しく知りたいと感じた。ところで本作品のラストでもナレーションされていたが「何で女学校にロシア製ピアノが入っていたのか」も是非探ってほしい。

    株式会社メディア開発綜研 菊地 実
    蘇る音色 南吉ゆかりのピアノ その復元の軌跡
    作品時間:28分39秒 (1M)
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