第9回全国地域映像コンクール受賞作品歴代受賞作品紹介

第9回全国地域映像コンクール受賞作品

  • グランプリ
    コメづくりは国づくり
    選評

     岡山県の吉備地方には早くから米、鉄、塩を中心とした文化が栄えて来たことが知られているが,最近の発掘調査で田植えまで行っていたらしい事が判った。
     岡山大学農学部教授を退官した景山詳弘さんは、古い歴史のあるこの土地に「百楽塾」という農業塾を開いて新しい有機農業に挑戦している。耕作放棄された田んぼを修復し、伝統的な技術にもとづく手づくり農業で、種籾の蒔き付けから収穫までを行っている。本作品はそのユニークな農業の詳細な記録である。
    たとえば田植えは昔ながらの植縄を使い稲の苗一本ずつを植える。雑草対策は糠を水田に撒き、それが田の底で発酵して雑草の酸素を奪って生育を阻止する、等々である。一つ一つの技術は珍しくないものが多いが説得力があり、また、実績も伴っている。一粒の種籾は秋には平均3,700粒もの稔りとなり、反あたりの収量も周囲の農家とあまり変わらない。農学部の教授だっただけに有機栽培の運動家とひと味違った物静かな語り口で「いもち病はでても豊富な生物相のおかげで広がらない。」と生物多様性の重要性を説く。
     この作品は番組構成上は問題なきにしもあらずだが、それでもグランプリに選ばれたのは「百楽塾」農作業の詳細を克明に追った映像が図らずも現代農業の問題点をあぶり出しているからに他ならない。雑草対策について「イネが雑草に負けるからとるので、雑草が憎い訳ではない。」と語る景山さんの言葉は今日の農業関係者に最も聞かせたい言葉の一つである。

    映像プロデューサー 加藤 辿
    コメづくりは国づくり
    作品時間:56分52秒 (1M)
  • 優秀賞
    福知山の養蚕~蚕と桑と由良川と
    選評

     この作品は福知山市に残る三軒の養蚕農家を一年間の長期にわたって取材し、作成したものである。かつて福知山は「蚕都」と呼ばれるほど全国でも有数な養蚕地帯であったが今では京都府下での養蚕農家は福知山に残る三軒のみとなってしまっている。
     作品では蚕の飼育に心血を注ぎ、繭になるまでに育て上げる養蚕農家の努力する姿が克明に描かれている。孵化したばかりの小さな蚕の幼虫が懸命に桑の葉を食べる姿が健気でいとおしい。養蚕農家が蚕とともに暮らしわが子のように可愛がる姿が感動的である。
     蚕を育てるには温度管理、消毒、成長に合わせた飼育方法など様々な努力が要求される。また、蚕の食べる桑の手入れにも欠かすことができない。長期の努力の結果蚕の作り出した光り輝く繭玉は深い感銘を与える。絹糸は日本の誇るべき伝統産物であるが、現在は輸入絹糸や化学繊維に押され斜陽産業になってしまっているのが惜しまれる。この伝統文化を後世に伝えたいという制作者の強い想いが込められたすぐれた作品である。

    プロデューサー 澁谷康生
    福知山の養蚕~蚕と桑と由良川と
    作品時間:1時間59分54秒 (1M)
  • 地域文化アーカイブス理事長賞
    佐太神社御座替祭と佐陀神能
    選評

     出雲佐太神社には御座替祭(ござがえさい)という神座の茣蓙(ござ)を敷き替える神事とそれに併せて舞われる神楽が伝えられている。作品はこの神事と神楽を丁寧に記録する。神事の方は夜中に提灯の明かりのみで行われる。限られた条件下での記録は並大抵な撮影照明技術ではない。その神秘的な美しい映像から撮影時の苦労が偲ばれた。一転、400年の伝統を持つといわれる神楽「佐陀神能」は華麗、豪壮、優美であり、神事とのコントラストが妙である。神楽の方はコンクール審査会が開かれている最中、バリ島で開かれていた政府間委員会で国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されることが決まったというニュースが飛び込んで来た。この作品が新しく登録された文化遺産を世界に伝える役割を果たすことになろう。制作された島根県古代文化センターに敬意を表したい。

    メディアプロデューサー 高島秀之
    佐太神社御座替祭と佐陀神能
    作品時間:28分14秒 (1M)
  • 審査員特別賞
    越中を拓く ―椎名道三と十二貫野用水―
    選評

     黒部川から100m以上も高い位置から24Kmにわたって用水路が作られた。十二貫野用水である。
     この用水は、江戸時代の終わりに、富山の偉人・椎名道三によって作られたとのこと。この時代、凶作が頻発したことから、農民の生活安定と加賀藩の財政を支えるために、黒部川の扇状地に連なる十二貫野大地へ用水を引き、新しい農地を開墾しようとという一大プロジェクトである。
     黒部川の上流の渓谷から必要な用水を集めるために、トンネルを掘ったり、広大な十二貫野大地に均等に用水が行き亘るような分岐の場所と水量を計算したりと、その困難さが映像を通じて良く伝わってくる。
     今は使われなくなった用水路に水を流したり、フリーウエアの地形3Dソフトを駆使したりしながら、静的になりがちな画面に動きが出るよう工夫を凝らしている。
     この用水は改良されながら今でも使われているとのこと。地元の人にこそ見て欲しい作品だ。

    (株)NHKエンタープライズ
    エグゼクティブチーフプロデューサー
    寺田一教
    越中を拓く ―椎名道三と十二貫野用水―
    作品時間:18分27秒 (1M)
  • 奨励賞
    芦屋の八朔行事
    選評

     八朔=旧暦八月一日は稲穂が実る収穫祭として様々な行事が行われてきた。既に失われてしまったが、江戸幕府にとって八朔は正月と並ぶ二大行事だった。
     北九州遠賀川河口に位置する芦屋町は古くから大陸との貿易で栄えた港町。芦屋・山鹿地区では、子供の成長を「たのむ」ものとして八朔行事(九月一日)が今でも盛んに行われている。男の子には馬を模したわら細工、女の子には餅を様々に着色し、デザインしたしんこ細工が飾られる。作品はわら細工の制作過程やしんこ細工の工夫を丁寧に収録している。さらに芦屋町だけでなく広島・宮島、香川・丸亀など西日本に広がっている八朔行事も紹介している。
     ところで、この作品を見ると八朔行事は日本のハロウィンであることがわかる。

    株式会社メディア開発綜研 代表取締役社長 菊地 実
    芦屋の八朔行事
    作品時間:1時間20分32秒 (1M)
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